「ナラ枯れを通して、これからの里山を考える」

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皆さま、こんにちは!!

県北の山を見ると、ケヤキなどが紅葉の手前まで来ている様子です!

秋めいていますね!

しかし、昨年と今年は夏だというのに、コナラやミズナラの葉が茶色く変色して落葉していく現象が目だってきました。遠くから山を眺めていてもその姿は周囲の緑とはギャップがありすぎて異様な光景でした。

これはナラ枯れ(ナラ・カシ類萎凋病)被害によって、突如に木が枯死する現象なのです。

本当に数日の間に枯れてしまい異変に驚かされました。このように、急激に枯れる病気は萎凋病と総称されます。

  • ナラ枯れとは

1990年代から本州各地で、落葉樹のナラ類及び常緑樹のカシ類、シイ類などに集団枯死が広がり、一般にナラ枯れと呼ばれています。

葉がけれた後に落葉したミズナラ

根元近くにはカシノナガキクイムシが開けた穴とフラス(木くず)

 原因は、真菌類(ラファエレア クエルキラーボ、カビの仲間)への感染です。

この菌は、養菌性キクイムシ(幹に開けた道の壁面で共生菌を繁殖させて幼虫の食料とする)であるカシノナガキクイムシによって、枯死木から健全木へと運ばれて感染します。

  • 枯死のメカニズム

 樹木には、菌類や昆虫類による被害を回避するための防御システムがあります。

木部の柔細胞類がテルペンやフェノール性成分など有毒な物質をつくる。カシノナガキクイムシ穿入や病原菌の菌糸に対しても、こうした防御反応が起こります。

しかし、この菌は長い孔道を利用して、迅速に分布を拡大する。

また、カシノナガキクイムシが集中加害(マスアタック)するため、防御反応が十分機能しないまま防御による変色(傷害心材)が樹幹内に広域つくられます。そして、菌が侵入したところには防御物質がつくられて帯積し変色します。この防御物質が分泌された部位は、水分の通道が停止します。多数の穿入を受けた幹は、辺材のほぼ全域に菌が分して変色し、水分の通道が止まります。そのため、梅雨明け後の蒸散が活発になるころから樹幹や枝の水分が欠乏し、急激な葉褐変と枯死がおこるのです。

  • 発生原因と対策

 1990年ころまでは大発生が認められなかったナラ枯れがなぜ大発生しているのか、その根本的な原因は明らかになっています。つまり、1950年ごろまでは伐採して利用していた里山(薪炭林)を放置し、大木になったナラ類などでカシノナガキクイムシが活発に繁殖して病原菌を媒介したのです。

約半世紀前までは薪や炭の生産のため、20年程度の間隔で定期的に伐採されていた。

その後、萌芽(切株からの芽生え)により更新されていたのです。

さらなる被害拡大を防ぐには、枯死木への対応ではなく、被害の出にくい森林をめざした管理が重要になりそうです。

しかも、ナラ枯れ後には、植生遷移の方向が自然の遷移とは異なることが多いのです。

被害発生前の高齢ナラ林では、林内や林床が暗くなっており、陰樹である常緑中低木の実生・幼樹が多い傾向があります。

東日本や西日本の地域差はあるが、ナラ枯れ発生後には、ソヨゴ、ヒサカキ、ヤブッパキなどの常緑樹の繁茂がすすむため、陽樹はいっそう育ちにくくなります。そのため、被害林では高木種が更新しない場合が多いのです。

里山を健康に維持するには、被害にあっていない林を生きているうちに伐採して、萌芽更新させる必要があります。ただし、伐採をすることはギャップを生むことになるので伐採の計画は慎重に行う必要があります。

薪炭林と同様のナラ林に誘導することを視野に入れた、適正で継続な管理が必要になりそうです。

では、また。

伊藤でした。

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