「シカ被害に間伐が効果的!?後編」

現場のこと

2021年

謹んで、新年のお喜びを申し上げます。

旧年中は、弊社のブログをご覧いただき、厚く御礼申し上げます。

今年のお正月は、例年と違った形で迎える方が多かったのではないでしょうか。

親戚で集まったり、グループで初詣に行ったり出来ない状況にありますが

健康でいられることのありがたみを改めて感じました。

コロナウイルス流行のこともあり、特に今年はご健康に気を付けてお過ごしください。

今回のブログは前回に引き続き、シカ被害についての記事です!

そうは言いましても、前編の投稿はしばらく前になりますのでこちらをご覧いただいて、思い出せてもらえると幸いです。

前回は、「シカによる剥皮害はなんで起きるのか」という疑問で終わっていました!

後編では、その疑問を明らかにしていきたいと思います!!

その前にシカとシカの生息環境を知っておく必要がありそうです。

シカとその生息環境にはどのような関係があるのでしょうか!?

シカは、環境に対する適応力が高い動物で雪の深い地帯を除いて、山地から平野まで森林が存在する多様な環境に生息し、広い範囲の植物を採食しています。 一方で繁殖力も高く、メスは3歳から約10年間、ほぼ毎年、子を産み続けます。条件が良ければ毎年10%以上増えていきます。これは7年でほぼ2倍になることを意味します。このように適応力、繁殖力が高く、かつ群れで生活するため、生息密度が高くなると植生の破壊や裸地化を引き起こすなど、自らの生息環境を悪化させるばかりか、生態系全体に大きな影響を与えることが知られています。ある年に生まれた同じ年齢のシカは、オスもメスも2歳までにほぼ半数が死亡します。死亡の多くは冬のエサ不足と低温によるもので、特に大雪の冬には死亡が多くなるようです。

このことから、個体数の増加を抑制するには、冬の寒さ(特に時々訪れる大雪)が非常に大きな要因であることがわかります!!

シカは成熟した森林の中ではなく、柔らかい草や低木の多い、ギャップや低木林や草原を生活場所にしているのです。そして山林の多くが天然林に覆われていた時代には、そのような生活場所は多くなかったわけです。

ところが、戦後の経済成長期に天然林を大面積で伐採し、針葉樹林に造林してきました。若い造林地には草や低木が大量に繁茂し、20年ほどの間、豊富な食物を供給し続けます。このように人間のもたらした好条件でシカは個体数を増やしてきました。やがて、人工林が成長し林冠が閉鎖するようになると、林内には光が届かなくなり、林床にはほとんど植物のない状態に変わります。そうなると大面積の人工林はシカにとってみれば、砂漠のような場所になってしまいます。

このため特に、冬季には餌不足からヒノキ・スギの剥皮害に繋がっていると報告されています。*1

春季~夏季にかけては肥大成長が盛んになり、樹皮は形成層の内側で剥離されやすくなると言われます。*2成長期のヒノキ・スギの内樹皮は大量かつ集中的に存在し、効率的に入手できるという利点もあり、食物メニューの中で相対的に高く位置づけられている可能性があります。*3

つまり、人工林にほとんど植物がないので、増え続けるシカはヒノキ・スギの皮を食べるしかないのかもしれません!

しかも、大雪の冬もなくなった状況では、いったん増え始めたシカの数を抑制する要因がありません!

これから、被害防除や個体数調整の努力はもちろん必要となります。

僕たちの行う間伐が多様な植物の生育に繋がり、程よくシカに餌を供給できると考えられます。そのことで、ヒノキ・スギの皮を食べられなくて済むのではないでしょうか!

急激な変化を避けながら、自然本来のバランス関係を作るためにも間伐が大きく影響する可能性を感じました!!あくまでも、山林としての機能・価値を下げてしまうことがないように適切な間伐が出来るよう勉強していきたいと思います。

では、また。

伊藤でした。

*1 飯村 武.1980.シカの生態とその管理.

*2 安藤正規.2004.二ホンジカによる樹木剥皮発生機構に関する基礎的研究.

*3 佐野 明.2009.二ホンジカによるスギ、ヒノキ若・壮齢木の剥皮害の発生時期と被害痕の特徴

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